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大阪高等裁判所 昭和24年(を)3753号 判決

被告人

梅垣誠一

主文

本件控訴を棄却する。

理由

弁護人伏見禮次郞の控訴趣意第一点について。

しかし、原判決認定の事実によれば被告人は米麦等の生産者であるが法定の除外事由がないのに自己生産の白米二斗五升を魚肥十二貫と交換したと云うのである。物価統制令第十三条は元来製造者又は販賣業者が賣買その他の取引において対価として金銭以外のものを要求又は受領することを禁じて、たまたま交換し得る物を所有する者だけが不公平に利益な立場に立つこと及び価格の統制が乱れることをできるだけ防止しようとすることを目的とするものである。それ故農を業とし米麦等の生産者である被告人が正当の事由がないのにその生産の白米を魚肥と交換した行為はその業務上のものであつて同条に該当することは明らかである。原判決がこれに対して物価統制令第十三条第三十五条を適用したのは正当である。論旨は理由がない。

(弁護人伏見禮次郞の控訴趣意)

原判決は

被告人は米麦等の生産者であるが法定の除外事由がないのに昭和二十四年三月十四日被告人肩書地に於て自己生産に係る

第一、(省略)

第二、白米二斗五升を前記小島薰に魚肥十二貫と交換したるものである。との事実を認定し右判示第一事実に付き食糧管理法第九条、第三十一条、同法施行令第八条、同施行規則第二十一条を判示第二事実につき物価統制令第十三条、第三十五条を夫々適用し被告人を懲役六ヵ月及び罰金五万円に処し三年間右懲役刑の執行を猶予する旨判決の言渡しをしたのであります。

第一点 原判決は法令の解釈を誤りたる違法の判決であります。

蓋物価統制令第十三条は「何人ト雖モ正当ノ事由アル場合ヲ除クノ外業務上価格等ニ対スル給付ニ関シ対価トシテ金銭以外ノモノヲ受クルノ契約ヲ為シ又ハ之ヲ受領スルコトヲ得ス」

と規定し同条は業務上のものであることを犯罪の構成要件となすものなること極めて明瞭であります。従つて被告人の所為が同条違反と認定するには其の前提として前記交換行為が業務上のものなることを要し業務上なされたるに非ざる限り被告人が他の法令に依り処罰されるは格別同条違反行為として処断する事は法令の解釈適用を誤まれるものと云はねばならないのであります。飜つて本件を顧るに被告人が業務上右交換行為を為したるものに非ることは判決文の記載自体により明瞭であつて右事実に対しては同法条を適用することは出来ないのであります。従つて原判決は法令の解釈適用を誤つた違法の判決で破毀せらるべきものと思料します。

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